『イシューからはじめよ』という書籍を読んだのでエンジニア目線でレビューします。
なぜ購入したのか?
最初に言っておくと、深い意味があって購入したわけじゃありません。
エンジニアにジョブチェンジする前に買ってありましたが、最近までちゃんと読んでませんでした。
なんなら「イシューという表現の仕方が鼻につくな」くらいに思っていました。
ですが、エンジニアになった今この本を読むと全然印象が違います。
印象が変わった理由
「どんな本だったかな?」と確認するつもりで少しだけ読もうとしたところ、最初の一文が強く印象に残りました。
僕がこれまでに見てきた「圧倒的に生産性の高い人」にひとつ共通していることがある。それは、彼らが「ひとつのことをやるスピードが10倍、20倍と速いわけではない」ということだ。
安宅和人. イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」 (p. 3). (Function). Kindle Edition.
エンジニアの世界ではよく「優れたエンジニアは普通のエンジニアよりも生産性が10倍以上高い」と言われます。
僕もそういったエンジニアを目指して、ショートカットやランチャーツールなどを駆使して作業の効率化を進めていました。
一方で、これらの効率化が10倍もの生産性の差を生み出すとは思えておらず、抜本的に欠けている視点があるとも感じていました。
そんな中で上記の一文を目にしたことで、今の自分に不足している考え方が見つかりそうだなと思い、読み進めることにしたのです。
エンジニア視点での3つのポイント
エンジニア視点で読むと次の3つのポイントが印象に残りました。
- 「イシュー」を見極める重要性が再認識できる
- エンジニアとしてバリューを発揮できる場面が増えそう
- つよつよエンジニアほどイシューへのこだわりが強い
1. 「イシュー」を見極める重要性が再認識できる
「どれだけ頑張ったとしても、解決すべき問題(=イシュー)を間違えたら成果にはつながらない」ということが本書では強調されています。
エンジニアはしばしば「どう実装するか?」にこだわりがちです。
しかし、その機能が大して使われてないのであれば、成果は限定的になってしまいます。
つまり成果を最大化したいのであれば「どう実装するか?」よりも「そもそもどの機能を実装するか?」にこだわった方が圧倒的にインパクトが大きいです。
本書を読むことでこの思考法が少しずつ自分の中に定着してきました。
2. エンジニアとしてバリューを発揮できる場面が増えそう
この本の考え方を習得することで、コードを書く以外でも付加価値を発揮できるようになるはずです。
具体的には次の場面です。
- 要件定義や仕様検討のミーティング
- プランニングなどでのタスクの優先順位決め
本書からイシュー見極めの重要性とそのプロセスを学ぶことで、「本当にやるべき施策やタスクはどれか?」「この施策で最も重要な目的は何か?」という観点で発言できるようになると思います。
体験談
ぼく自身まだまだマスターしきれていないですが、本書を読んで以降のミーティングで一度だけ、自分の発言きっかけで要件をシンプルにすることができました。
3. つよつよエンジニアほどイシューへのこだわりが強い
本書を読んだ後で改めて業務をしているうちに、つよつよエンジニアほどイシューへのこだわりが強いと思うようになりました。
- 「〇〇したらもっとシンプルになりませんか?」
- 「××さえすればこの機能は不要じゃないですか?」
こういった鋭い一言で要件をスリム化したり機能の実装が取りやめになったりする場面が多々あるからです。
僕はそういう場面で「言われてみたらそうだけど、どうやってそんなこと思いつくんだろう?」と思っていました。
しかし今では発想力の高いエンジニアはまず問題設定(=イシュー)を疑って無駄を省いているんだなと理解できました。
この本が合わないエンジニア
一方で以下に当てはまるエンジニアにはマッチしない本だと思いました。
- 即効性を期待している
- 生産性ではなく行動量で成果を稼ぎたい
- すでに思考法やフレームワークを十分学んでいる
- エンジニアに特化した内容を求めている
1. 即効性を期待している
本書はあくまでも思考法であり具体的なTips集ではないです。
今日読んだからといって明日からすぐ実践できる類の本ではありません。
あとがきにも書かれていましたが、本書の内容をどう取り入れていくかを自ら考え実践していく必要があります。
即効性のあるノウハウを求める人にとっては期待はずれの本かもしれません。
2. 生産性ではなく行動量で成果を稼ぎたい
「自分は技術が好きだから生産性にはこだわらず、圧倒的な作業ボリュームで成果を稼いでいくんだ」
こういうタイプのエンジニアにも合わないです。
そういった根性勝負・作業量で成果を出そうとすることを本書では「犬の道」と表現しており、断固として否定しています。
補足: エンジニアのカルチャーへの配慮
エンジニアの世界には「技術が好き」という前提のもと、「根性ではなく好きだから膨大な作業量も自然とこなせる」という価値観も存在していますし、それはそれで大切なカルチャーです。
なので好んで「犬の道」に進むのであればそれはそれで幸せだし、1つの戦い方かなと思います。
3. すでに思考法やフレームワークを十分学んでいる
ロジカルシンキングや課題設定に関するフレームワーク本を多数読んでいるエンジニアにとっては新鮮味が薄いかもしれません。
とはいえコンパクトにまとまっている良書ではあるため、復習がてら読んでみても良さそうには思います。
4. エンジニアに特化した内容を求めている
一般的なビジネス書なのでエンジニアの業務は想定されていません。
特に第2章以降は絵コンテ・資料作成などコンサルの仕事を想定した話になっています。
第1章をしっかり読めば、エッセンスは十分インプット可能です。
最後まで読もうと意気込む必要はありません。
概要を理解したら実践してみて、その後でまた本書を読み直すフィードバックサイクルを回すのが良いと思いました。
まとめ
『イシューからはじめよ』は「本当に取り組むべき問題」を見極める重要性とその考え方をわかりやすく解説した本です。
以下に当てはまるエンジニアが読むとヒントが得られそうです。
- 複数のタスクに追われ優先順位や本来の目的を見失いがち
- 鋭い発言で要件をスリム化しチームとしてのパフォーマンス向上に貢献したい
- 問題を見極める力を磨いて圧倒的な生産性を誇るエンジニアになりたい
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